目黒区美術館コレクション展 新収蔵品を中心に+清原啓子の銅版画
概要
展覧会名 | 目黒区美術館コレクション展 新収蔵品を中心に+清原啓子の銅版画
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会期 | 2025年10月11日(土)~2025年11月16日(日) |
休館日 | 月曜日 *ただし、10月13日(月・祝)・11月3日(月・祝)は開館、10月14日(火)・11月4日(火)は休館 |
時間 | 10:00〜18:00(入館は17:30まで) |
観覧料 | 一 般 700(550)円
大高生・65歳以上 550(400)円
中学生以下 無料
*( )内は20名以上の団体料金
*障がいのある方とその付添者1名は無料
*目黒区在住、在勤、在学の方は受付で証明書類をご提示いただくと団体料金になります。
*他の割引との併用はできません。
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主催等 | 主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館
協力:八王子市夢美術館、町田市立国際版画美術館 |
目黒区美術館はこれまで、日本の近現代美術を中心に多様な展覧会を開催してきました。なかでも、毎年行っているコレクション展(所蔵作品展)は、様々なテーマで収蔵品を紹介するとともに、来館者と美術作品の新鮮な出会いの場となることを目指してきました。
この度は、2023(令和5)年度に新収蔵となった多和圭三、寺崎百合子、村上友晴の作品を中心に、厳選した現代美術のコレクションを紹介します。さらに本展では、特集展示として、当館が開館した1987(昭和62)年に31歳の若さで急逝した銅版画家・清原啓子の作品を取り上げます。清原がその短い生涯に遺した銅版画作品は未完成を含めてもわずか30点でした。当館は作家没後の後刷り25点を収蔵していますが、清原の生誕70年である今年、館外コレクション等からの貴重な銅版画作品をあわせ全30点を一堂に展示します。
本展では、前半は新収蔵品を中心に、後半は清原啓子の作品を紹介します。新収蔵の多和、寺崎、村上の作品は、それぞれ展示室空間を分けて展示し、さらに当館コレクションより草間彌生の立体作品、香取正彦、安原喜明の工芸作品などで構成します。
今回取り上げる作家は、彫刻、絵画、版画、工芸など、ジャンルも、素材や技法も、それぞれ異なります。
本展では、作品を制作する作家から見えているものという視点から作品を取り上げます。作家と作品の関係性に思いを寄せてみることで、作家の創作活動の秘密を見出すことができるかもしれません。本展が、美術作品との新しい出会いの場となれば幸いです。
多和圭三《無題》 1999年 鉄/4点組 各h.198.0,47.5×47.5cm 目黒区美術館蔵 photo: 山本糾
展示構成と主な出品作品
本展では、前半は新収蔵品を中心に、後半は特集展示:清原啓子の銅版画を展覧します。新収蔵の多和圭三、寺崎百合子、村上友晴の作品は、それぞれ展示室空間を分けて展示し、さらに当館コレクションより、草間彌生の立体作品、香取正彦、安原喜明の工芸作品などで構成します。ここでは、新収蔵の三作家と特集展示の清原啓子をご紹介します。
※出品作品は変更になる場合があります。
■ 多和圭三

多和圭三《無題》1999年
鉄/ 4 点組 各h.198.0, 47.5×47.5cm 目黒区美術館蔵
「鉄を叩く―多和圭三展」2010年
当館会場風景 photo:山本糾
多和圭三(1952-)は、1970年代から主に鉄を素材に作品をつくり続けている彫刻家です。素材自体に対峙し、自分の存在性を問いかけながら、両者をただ「ある」ものとして提示することを多和は求めてきました。
当館は2010年に、個展「鉄を叩く ― 多和圭三展」(足利市立美術館、町立久万美術館を巡回)を開催し、その独自の仕事を初期から最新作で紹介しました。この時の出品作であり、2023年度に作家本人より寄贈され新収蔵となった4点組の作品《無題》(1999年)を、本展では、個人蔵の平面作品とともに、当館の中で一番広い展示室でご覧いただきます。
【主な展示作品】
・《無題》 1999年 鉄/4点組 各h.198.0cm,47.5×47.5cm /目黒区美術館蔵(2023年度収蔵)
・《景色》 2010年 インク、鉛筆・紙 106.5×79.6cm/個人蔵
・《景色》 2010年 インク、パステル・紙 80.2×120.8cm/個人蔵
・《無題》 2010年 インク、パステル・紙 80.5×121.0cm/個人蔵 など
■ 寺崎百合子

寺崎百合子
《Taylor Institution Library, Oxford》2003年 黒色鉛筆・紙 57.0×45.0cm
目黒区美術館蔵
寺崎百合子(1952-)は、階段や本、楽器など、作り手の気配を感じさせるものをモティーフとし、そこに染み込んだ悠久の時間を黒の色鉛筆で細密に描いています。1998 年から翌年にかけ、文化庁芸術家在外研修員としてイギリスに滞在した寺崎は、オックスフォード大学ニューカレッジに客員研究員として在籍し、現地で様々な図書館を取材して、2003年には図書館を描いた一連の作品を発表しました。
《Taylor Institution Library, Oxford》(2003年)はその代表作です。本作は2007年に当館が開催した「線の迷宮〈ラビリンス〉II ―鉛筆と黒鉛の旋律」展の出品作で、2023 年度に個人所蔵家より寄贈されました。
本展では、同じく「線の迷宮〈ラビリンス〉II」展での展示をきっかけに、当館蔵となった「階段」を描いた作品を併せて展示します。
【主な展示作品】
・《Taylor Institution Library, Oxford》2003年 黒色鉛筆・紙 57.0×45.0cm/目黒区美術館蔵(2023年度収蔵)
・《Borghese Garden》 1992年
黒色鉛筆・紙 54.5×76.5cm/目黒区美術館蔵
・《L’Opera》 1992年 黒色鉛筆・紙 57.6×76.6cm/目黒区美術館蔵
■ 村上友晴

村上友晴 《無題(礼文)》1986年
油彩、アクリル・紙 61.7×45.2cm 目黒区美術館蔵
村上友晴(1938-2023)の静謐な絵画は、人を深く惹きつけます。幾重にも重ねられた絵具や線が織りなす微妙な相違が画面に奥行きと広がりを感じさせます。独特の手法と一貫した制作姿勢で、時には数年の歳月をかけて描かれ生れた絵画は、敬虔なカトリック信徒であった作家において、祈りのようなものだったと言えるかもしれません。
村上のアトリエは中目黒にありました。当館は、初期の版画集、1980年代の代表作である油彩画、90年代以降の紙の作品など、彼の画業の中で要ともいえる作品を折に触れて収蔵してきました。そして、2018年に「村上友晴 ひかり、降りそそぐ」展を開催し、「村上の色」である黒・白・赤に着眼した構成で、この作家の絵画世界をご覧いただきました。
《無題(礼文)》(1986年)と《無題》(1980年)は、この時の出品作で、
2023年度に受贈しました。本展ではこれら新収蔵品と、2010年に作家本人より受贈した赤と黒の石版による紙の作品《東大寺修二会》(1990年)を展示します。
【主な展示作品】
・《無題(礼文)》 1986年 油彩、アクリル・紙 61.7×45.2cm/目黒区美術館蔵(2023年度収蔵)
・《無題》 1980 年 水彩・紙 62.5×50.7cm/目黒区美術館蔵(2023年度収蔵)
・《東大寺修二会》[6点組] 1990年 石版、アクリル、油彩・紙 各6.7×5.0cm(画寸)/目黒区美術館蔵 など
■ 清原啓子
「清原啓子の版画を見る人は、その驚くべき精緻と、異様なまでの描写への執念に、先ず眼を見張るに違いない。」
これは、1983年の清原の初個展に大学の恩師・深沢幸雄が寄せた文章の一節です。(深沢幸雄「夢の凝視者」、清原啓子銅版画展/番町画廊、1983年11月7日発行 ※『没後35年 清原啓子銅版画』展図録、2022年、佐倉市立美術館 、p.23 より)
清原啓子(1955-1987)は、早くから才能を開花させ、将来を嘱望されながらも夭逝した銅版画家です。久生十蘭、澁澤龍彦、三島由紀夫など、幻想性、耽美性、神秘性に富む作家を敬愛した清原は、物語性にこだわり、濃密にして清麗な世界を描きました。清原にとってのモティーフは自身の夢の集積と凝縮であると言います。
当館は、1989年の所蔵作品展で小企画展示として個人蔵の22点により清原の作品を紹介しました。これをきっかけにその翌年、深沢幸雄の監修で後刷りされた25点が当館のコレクションに加わりました。以来、当館は度々、企画展等で清原の作品を展示してきました。生誕70年である今年、当館所蔵の25点と館外コレクション等からの貴重な版画作品をあわせ全30点を展示します。また、版画と同じ構図で描かれた鉛筆画や版画の試し刷り、版画の原版など貴重な関連資料も展示します。
【主な展示作品】
・目黒区美術館所蔵 清原啓子銅版画作品 25点 (深沢幸雄監修の後刷り作品)
・《(失題)》 エッチング・紙 45.3×60.2cm/町田市立国際版画美術館蔵
・鉛筆画《領土》(1980年頃)、《魔都霧譚》(1983年)/個人蔵

清原啓子 《魔都霧譚》 1987年 エッチング・紙 47.0×30.0cm(画寸) 深沢幸雄監修による後刷り/1990年 目黒区美術館蔵

清原啓子 《孤島》1987年
エッチング・紙 35.7×33.7cm(画寸) 深沢幸雄監修による後刷り/1990年 目黒区美術館蔵
関連催事
■ ミュージアムコンサート (企画:(公財)目黒区芸術文化振興財団 めぐろパーシモンホール)
めぐろパーシモンホールと目黒区美術館は、展覧会の内容にリンクしたコンサートをホールが企画し、
会場は美術館で、音楽を楽しむ「ミュージアムコンサート」を毎年開催しています。
今回は、閉館後の本展展示室を会場に、音楽に触れる夕べを開催します。
※開催日、公演内容等の詳細は決まり次第、めぐろパーシモンホール、目黒区美術館の各ウェブサイトでお知らせします。